機動兵器のある風景
Scene -55







 公式では二回目となる“テラ”への指導は、アースガルズとテラの関係が新しい時代を迎える転機となるものだった。特区第三新東京市でのパイロット達への指導とは別に、国連に対して賢人会議から代表団が派遣されたのだ。それはアースガルズ内部で、円卓会議への丸投げを反省した結果でもあり、機が熟したと彼らが考えた結果でもあった。
 その結果、特区第三新東京市での受入は静かな物になった。ニューヨークの国連本部に、政府関係者並びに特区上層部がかり出されたのがその理由だった。そして特区を訪れたアースガルズ側も、テラを任されたヴァルキュリアとラウンズも、ニューヨークでの会合を優先していた。ただこちらの方は、頭の2日を済ませば特区に合流する手はずになっていた。

「まことに申し訳ないのだが、碇様は明後日から合流されることになる。
 従って、皆の期待する模範試合は碇様が合流されてから行うことにする。
 それまでは、テラのパイロットへの指導に重点を置かせて貰う」

 シンジが合流するまでのしきり役には、直前にレベル10を突破した霜月チフユが担当することとなった。そして助手には、レベル10認定が行われたクレオが付いていた。これは全くの余談なのだが、クレオの誕生日までは2ヶ月を残していた。つまり12歳でのレベル10越え認定が確実になったというわけだ。そして2ヶ月以内にレベル10を超えれば、シンジの持つ6ヶ月の記録を破ることになる。これも固いところだと、指導するシンジも認めていることだった。

 そして集まった全パイロットを前に、チフユは育成計画の説明を続けた。このあたりは、同時に行われている国連での会議と同調した物となっていた。

「今回特区セルンからも大勢のパイロットに集まって貰っている。
 すでに噂では聞いていると思うが、この中からアースガルズで訓練する者を選抜する予定だ。
 各々の適性を見極めて選抜するため、今回は2週間という時間を掛けることになった。
 選抜基準は……申し訳ないが私には分からん。
 ただ落ちこぼれていた私でも選ばれたのだから、必ずしも今のレベルだけで無いのは確かだろう」

 以上とチフユが下がったところで、代わりにアスカが壇上に上がった。そして特区代表として、この2週間の訓練計画を発表した。

「基本的に、両特区で行われている指導プログラムに沿った訓練を行います。
 ただし、アースガルズから実力者にお出でいただいているので、
 特別指導と講義をプログラムに追加します。
 またそれとは別に、明後日からは模範試合をプログラムに組み入れます。
 繰り返しになりますが、選抜はアースガルズによって行われます。
 必ずしもレベル上位者が選抜されるわけではないことを理解するように!
 本日は、当初予定のプログラムで訓練を実行します」

 以上と説明を終わったアスカは、各自定められた訓練に掛かるように号令を掛けた。主役が来ていないのだから、まだ本番前という意識が双方にあったのである。だから主役到着までの下準備として、日々のスキルアップを主眼に置いたと言うことである。
 アスカの指示で、集まったパイロット達は各々の訓練プログラムへと移動していった。アースガルズでの訓練という餌のお陰か、普段より意気込みがあるように思われた。それを満足げに見送ったアスカは、「ところで」と言ってチフユに今晩の予定を尋ねた。

「公式の場ではチフユ様って呼ばせて貰うけど、チフユ様の今晩の予定はどうなってるのかしら?」
「今日はシンジ様も居ないし、クレオと大人しくしていようと思っているのだが?
 せいぜいすることと言えば、ワカバのところに電話をするぐらいなのだ」

 弟の所に電話をすると言うのは、6ヶ月の時間を考えなくても優先されるべきことだろう。特にレベル10オーバーになって凱旋をしたのだから、余計に重要なイベントだとアスカは考えた。そうなると、夜のお誘いは遠慮した方が良いのかと考えてしまった。

「そっか、声を聞くのは久しぶりだったわね。
 実は、内輪で懇親会をしようと思ったんだけどね。
 ほら、シンジ様が来ると、正式の懇親会になっちゃうじゃない。
 色々と込み入った話をするには、逆に今の方が良いのかなってね」

 どうしようと相談されたチフユは、感謝するとお誘いを受けることにした。特区に対する帰属意識は全くないのだが、アスカ達に対する仲間意識は強く持っていたのだ。特にセシリアに対しては、返さなければいけない恩が沢山あると思っていた。それに、弟と電話をすると言っても、そんなに長い時間が掛かるとは思えなかった。どうせ帰りには寄るのだという気持ちもそこにはあった。
 だが自分が懇親会に参加するとなると、同伴者への気遣いも必要となる。そのことを問題にしたチフユは、クレオの参加をアスカに確認した。

「ところでその懇親会に、クレオを連れて行って良いのだろうか?」
「ぜんぜんオッケーよ、彼女には色々と聞いてみたいことがあるしね。
 彼女って宇宙育ちなんでしょう、そのあたりも色々と聞いてみたいのよ」

 そのあたりは、SF的世界への憧れがアスカにもあったのだ。スペースコロニーと言うのは、それほどまでに宇宙への憧れを掻き立てる物となっていたのだ。
 目を輝かせたアスカに、ほどほどにとチフユは忠告することにした。

「お手柔らかにな、あれはまだ12歳なんだからな。
 さすがにアースガルズでも、12歳で飲酒することはないからな。
 見た目に誤解して、酒を飲ませるのは感心しないぞ」

 何度も繰り返されたことなのだが、それでも繰り返さないといけないとチフユは考えていた。それぐらい、クレオは年相応に見えないところがあったのだ。シギュンの世話をしていた関係か、考え方も年相応に見えないところも影響しているのだろう。ただ弟のワカバを思い出すと、いかにも“妹”だと納得してしまうところもある。特に口うるさく生活態度を指摘されるのは、チフユが何度も経験したことだった。
 その感想は、アスカも感じていることだった。何しろ特区のパイロットと混じっても、ごく自然に思えてしまうのだ。周りと5歳以上年齢が離れているのを考えると、それは特異なことに違いなかった。しかも顔立ちが整っているのだから、間違いなく人気が出るだろうなと思っていた。

 そんなことを話していたら、戻ってきたセシリアが参戦してきた。二人が楽しそうにしているところを見たセシリアは、「何のお話しをされているのですか?」と話に加わった。

「ああ、今晩の懇親会のことよ。
 たった今、チフユ様に参加の承諾を貰ったところよ。
 クレオ様も、一緒に参加されるそうよ」
「それはよろしいのですけど、お子様を遅くまで連れ回してよろしいのでしょうか?」

 子供に対する対応は、ヨーロッパの方が厳しいことが知られていた。クレオが12歳と考えると、セシリアの意見が普通は正しいのだろう。だがそれを受け取った二人は、しっかりと日本の慣習に染まっていたのである。しかもアースガルズの慣習にも影響を受けているとなると、セシリアの意見は効果が期待できなかった。
 実のところ、未成年者……と言うと、ここにいる3人とも未成年者なのだが、その育成に関する倫理観には乏しかったのだ。唯一弟が居るチフユにしたところで、弟以外には無頓着という所があったのだ。

「別に、変なところを連れ回す訳じゃ無いから良いと思うわよ」
「渚さんさえ理性を保ってくれれば、別に問題は無いと思うがな。
 ただ碇様からクレオを預かっている以上、私にも責任があることを覚えておいて欲しい。
 さすがにその時まで、クレオに傷を付けるわけにはいかないからな。
 いざというときには、碇様以外に容赦をするつもりはないからな」

 ふっと口元を歪めたチフユに、やめてくれる? とアスカは意見した。容赦をしないという中身が、容易に想像が付いたのが問題だった。

「あれでも、一応あたし達の男なんだからね。
 使い物にならなくしたら、シンジ様に手を出すわよ」
「ならば監視して欲しいと言うところなのだが……
 だがアスカさんが手を出したとしても、私が困ることはなかったな……」

 今更一人や二人増えたところで、大勢に影響がないというのがチフユの正直な気持ちだった。特に先日ラウンズ筆頭に立ったこともあり、各ヴァルキュリア達からのお誘いが激しくなっていたのだ。しかも引退したヴァルキュリアやラウンズからの二人目需要も重なったため、今まで以上にシンジの体が忙しくなったという事情がある。その状況なのだから、一人ぐらいは誤差だと考えたのだ。チフユにしてみれば、実害がないというのが正直な気持ちだった。
 ただ、それ以上に問題なのは、アスカがカヲルの理性を信用しなかったことだ。大丈夫と保証しないのは、冗談とは言え男としては辛いところだろう。これでカヲルが目の前に居れば、程度の低いからかいの言葉ともとることが出来ただろう。だがカヲルが居ないのだから、どこまで本気なのか計りにくいところがあったのだ。

 ただカヲルの性癖については、枝葉末節のことでしかなかった。話を夜から昼に引き戻したセシリアは、これからの訓練のことを聞いてきた。

「まあ、渚様には理性に期待するとして、今日はチフユ様に指導していただけるんですよね?」

 そう言って、セシリアはよろしくお願いしますと頭を下げた。双方の立場を考えると、それは別におかしなことではないはずだった。だがチフユからすると、セシリアに頭を下げられる立場ではないと思っていた。
 だからチフユは、それは止めて欲しいと逆に懇願することになった。特区時代には仲が良かったと言うことはないが、今の自分があるのは一部セシリアのお陰だと思っていたのだ。その意味での恩人に、「チフユ様」と言われて頭を下げられるのはどうしても馴染めなかった。

「個人的には、セシリアにチフユ様などと呼ばれたくないのだ。
 何しろセシリアは、碇様と並んで恩人の一人なのだからな。
 申し訳ないが、普通に呼び捨てにして貰えないだろうか?」
「でも、以前はチフユさんとお呼びしていましたよ。
 それに、私はどなたも呼び捨てにしていませんよ」

 チフユと呼び捨てることは、逆にセシリアの理念に反することになる。それを主張したセシリアは、妥協案として「チフユさん」を持ち出すことにした。

「でしたら、チフユさんでよろしいですか?」
「あ、ああ、我が儘を言って申し訳なかった」

 チフユに頭を下げられたセシリアは、逆にそれも止めましょうと主張した。

「お友達同士で、そんなに頭を下げる物ではないと思いますわ。
 それに私たちは、碇様を通じてもっと近しい間柄になるのではありませんか?」

 将来ナニすることを前提としたセシリアに、顔を赤くしたチフユはそう言う事になると肯定した。そしてナニに関することで、お願いがあると切り出した。

「週の間に、2日オフが設けられているだろう。
 そのうちの1日を、私が使いたいのだが良いだろうか?」
「そのあたりは、碇様の希望を優先することを考えていましたわ。
 ですから、良いも悪いも、碇様に聞いていただかないと……
 とりあえず、1日でしたら反対する理由はございませんわね」

 そうかと頷いたチフユの顔は、まだ赤いままだった。その様子を鑑みるに、きっと何かを期待しているのだろう。もちろんそれを問いただすのは、野暮なことだとセシリア達は理解していた。

「それでは、機動兵器でのご指導をお願いできますか?」
「あ、ああ、碇様ほど出来るか分からないが、頑張ってやってみようと思う」

 もう一度「よろしくお願いする」と頭を下げたチフユに、立場が逆だとセシリア達は笑ったのだった。



 アースガルズからの訪問団は、賢人会議議員10名と円卓会議から2名、そしてその随行員を合わせて総勢40人ほどの規模となっていた。初の訪問として、構成メンバーの格式も十分というところだろう。そしてテラ側も、ニューヨークの国連本部に各国元首が集合することとなった。

 賢人会議の代表を務めたラズロと言う男は、テラの標準から見ても老人という風格をしていた。だがその見た目からは想像できない活発さを発揮し、精力的に代表の努めを果たしていった。到着した日に国連総会で演説を行い、そして各国首脳とも積極的に会談を行ったのである。急に開かれた門戸に対して、逆に各国が戸惑うほどだった。

 そしてその活動は、昼食として開かれたバンケットでも継続していた。話し相手としてちょうど良いと、ラズロは国連事務総長シ・カクストを捕まえた。そこで今後の階段で話題となる、双方における懸案事項について事前説明を行ったのだ。一般に根回しと言われる行動なのだが、そのあたりの考え方も双方に共通していたということだ。

「あなた方から要請のあった、我々との連絡手段の提供ですが、
 ここに連絡事務所を開設するというのを回答としたいと思います。
 メールシステム等については、限定的な運用を行いたいと思います」

 それでよろしいかと聞かれたシは、大きく頷いて見せた。初の会合で引き出せる条件としては、ほぼ満点に近いものと言う事が出来たのだ。ある意味、一方的なアースガルズの譲歩とも言えただろう。

「私たちとしては、アースガルズの配慮に感謝する物であります」

 そう言って差し出された右手を、ラズロはしっかりと握りしめた。そして「双方の利益のためだ」と配慮からではないとシの言葉に含まれた誤りを訂正した。

「私たちは、より確実にヘルの侵食を食い止める必要があると考えています。
 そして将来的には、サウスポールに出来た裂け目を塞ぐのを目的としています。
 ですが、今はヘルの拡大を防ぐのが精一杯というのが現実に違い有りません。
 ですから目標に到達するためには、双方の力を持ち寄ることが重要だと思っていますよ。
 その協力体制を築くためには、本格的な交流が必要だと我々は考えたと言うことです。
 従って、これは支配、被支配の関係では無いことを強調したいと思っています。
 テラの皆さんは、我々と共に歩むパートナーだと思っていますよ」
「そう仰有っていただけると幸いです。
 そのための手段として、人材の交流を行うお考えがあると聞いていますが?」

 今まで一方的な連絡しか受けられなかったことを考えると、人材交流まで行うと言うのは、大幅な前進に違いない。どさくさ紛れに連れて行かれた二人とは違い、今回は双方正式な合意に基づく人材交流となるのだ。その示す意味は、格段に大きな物となってくるだろう。
 人材交流というシの言葉に頷いたラズロは、それだけの実績があるのだと口元を緩めた。そして隅っこに二人で居る、碇シンジの方へ視線を向けた。

「いささかやんちゃなところはありますが、我々もシンジ碇の功績を認めたと言うことです。
 そしてチフユ霜月が、新たにレベル10オーバーに認定されたという事実もあります。
 その二つの事実を持って、我々は人材交流を行う方向へと舵を切ることになりました」
「つまり、交流はパイロット……そちらで言うブレイブスに限ると言う事ですか?」

 名前を出された二人は、いずれもパイロットでしかなかったのだ。その功績を認めたというと、自動的にパイロットの交流と考えてしまう。それだけでも意味は大きいが、期待とは少し外れる方向に違いなかった。
 そのシの気持ちに気付いたのか、ラズロはいえいえと首を振って見せた。

「シンジ碇を「やんちゃ」と評したのも理由になっていますよ。
 彼の素性を調べたのですが、そちらの教育も不足しているというのが分かりました。
 それであの程度の「やんちゃ」さならば、テラから人材を受け入れても大丈夫と判断したのです。
 従って、人材交流に関してはそちらの行政官、技術者を含む物と考えています。
 当然そちらで言うパイロットですか、ブレイブスの受入も考えていますよ。
 二人受け入れて、二人ともレベル10を突破した実績を無視することは出来ませんよ。
 できれば、もう一人ぐらい新しい男の血を入れたいと思っています」
「アースガルズの懐の深さに感心するばかりですな」

 素晴らしいと喜んだシは、晩餐が楽しみだと口元を緩めた。お酒を入れることで、もっと打ち解けた話が出来ると考えたのである。そのためには、必要となる確認をしなければいけなかった。

「ところで、ラズロ殿はいける口でしょうか?」

 杯を持つ真似をしたシに、ラズロは今までで一番力強く頷いた。今は昼と言う事で、酒類は夜までお預けとなっていたのだ。

「レグルス・ナイト、フェリス・フェリの報告では、こちらの食事も極めて美味とありました。
 従って、今宵どのように持てなしていただけるのか、楽しみにしているんですよ。
 もちろん、今いただいている料理も美味なことは認めていますよ。
 しかし、酒精の伴わない食事はどうも味気なくていけません」
「是非とも、期待に添えるよう努力致します。
 ただ人数が多くなりますので、今夜も立食とさせていただくことをお詫びさせていただきます。
 その方が、色々なお方とお話しが出来るという目的もあるのですが……
 よろしければ、ラズロ殿には別の機会に一席設けたいと思っております」
「個別のご招待と言うことですな。
 では、喜んでと答えさせていただきましょう」

 もう一度握手を交わした二人は、話をこの先の楽しみ方へと移していったのだった。双方の認識として、文化の交流を行ってこそ真の交流だという物があったのだ。別名、遊びの相談とも言えたのだが。

 そしてその頃、シンジとアヤセは不思議なスポットに落ち込んでいた。まともに考えれば、二人は円卓会議代表として忙しくなければおかしいはずだった。だがどう言う訳か、公式のレセプションでは、誰も二人のところに来ようとはしなかったのだ。どうやら、本命の賢人会議議員が来たことで、権限の限られる円卓会議は軽く見られたと言うことだろう。意外なほど、賢人会議の一行が友好的だというのも理由の一つかも知れない。
 ただ年寄りの中で面倒でないと言えばそれまでなのだが、あまり気分の良いものでないのは確かだった。それに心なしか、議員達から「邪魔」と言う空気が感じられるのだ。ここまで連れてきて、「邪魔」は無いだろうとシンジとしては主張したかった。

「余計な気を遣わなくてすむだけ有り難いんですけどね」
「居心地が悪いと言うのは確かですね」

 周りを見れば、年寄りばかりなのだ。そこに10代の若者2人というのは、アヤセの言う通り居心地が悪くなっても仕方の無いことだった。だから放っておかれるのも、メンツを考えなければご褒美なのかもしれない。ただいつまでも拘束されていては、別の意味で苦行になってしまう。ただシンジの感じた「邪魔」という空気は、アヤセにまでは届いていないようだった。

「どうします、二人で外に逃げますか?」
「私としては、そうしたいのは山々ですけど……
 さすがに公式行事を疎かにしてはいけないと思います。
 うるさ型の議員さん達が揃っていますから、品行方正にしないと駄目ですよ」

 ラズロにやんちゃと言われるぐらいなのだから、シンジの素行は目を付けられているのだろう。日頃品行方正にしていると自負しているシンジにしてみれば、そのあたりの決めつけは極めて不本意な物だった。ただ前回のトロルス襲来の実績があるため、甘んじて「やんちゃ」と言う決めつけを受けていたのである。
 ただこれがエステルなら、率先して「逃げましょう」と提案してきただろう。そのあたりは、エステルとは比較にならないほどアヤセが真面目だと言うことだった。どちらがまともかと言えば、常識的に言えばアヤセの方のはずだった。

「ですが、ここから先は視察になっていたと思います。
 ぞろぞろと各種施設を回るのは、はっきり言って退屈以外の何ものでもありませんよ」
「そりゃあ、下っ端のヴァルキュリアには、大した役目は回ってきませんけどね。
 年齢層が違うから、逆に私たちが邪魔だというのも理解しているつもりですよ。
 ですけど、テラ担当のヴァルキュリアとして、役目を疎かにして良いものではないと思っています」

 だから駄目ですとアヤセは繰り返した。そのあたりの融通の効かなさ頑固さも、エステルとは大きく違うところだろう。アヤセとしては真面目であるべきと考えた結果なのだが、周囲の期待は微妙に違っていたりした。それがシンジが感じた、「邪魔」と言う議員達の空気に繋がっていた。
 だがその空気は、アヤセには全く堪えないようだった。真面目さこそ信条とばかりに、誰に相手にされないブランチにとどまることを主張した。そんなアヤセと比較すれば、シンジの真面目さも大したことは無いと言えるだろう。

「では、ちょっと飲み物をとってきます」

 少しお待ちをとアヤセから離れたシンジは、ばれないようにラピスラズリを呼び出した。組紐のロック状況の確認と、自分の考えに対する意見を求めるためである。

「ここから外に出ることは出来るかな?」
「特に問題ないと思いますよ。
 ニューヨークでしたっけ、どの地域でも移動することは可能です」

 会談の目的とシンジ達の義務を考えた場合、移動エリアに関して制限が付いていてもおかしくはなかった。その制限がないと言うことで、シンジは周りの期待に対する確信を持った。

「ラピス、これからアヤセ様を掠って遊びに行くことにするよ。
 そうだな、最初の目的地はセントラルパークにしておこうか」
「了解しました。
 では、移動の時は合図をしてください」

 普段のラピスラズリならば、間違いなくお小言の一つもあっただろう。だが今回に限り、シンジの行動をあっさりと肯定してくれたのだ。それをユーピテル経由の指示と受け取ったシンジは、グラスを持たずにアヤセの所に戻っていった。ポケットに、軍資金の入ったプラスチックカードがあるのは確認済みである。

「シンジ様、飲み物を持ってきてくださるのではなかったのですか?」
「持ってくるのより、飲みに行った方が良いと思ったんですよ」

 そう言ってアヤセの手を取ったシンジは、「ラピス」と電子妖精に合図をした。その瞬間組紐の小規模組み替えが行われ、シンジとアヤセの二人はセントラルパークへと飛ばされていった。「やんちゃな」ラウンズとして、強硬手段に出たというわけである。

 まともに考えれば、二人はアースガルズから来た重要な客のはずだった。その二人が突然になくなれば、テラの関係者にとって見過ごすことの出来ない問題となるはずだった。そしてアースガルズ代表にしても、予定外の行動は咎められてしかるべきことのはずだった。
 だがシンジとアヤセの二人が消えても、誰一人として騒ごうとはしなかった。それは存在を無視されていたという意味ではなく、まるで居なくなることが予定の行動のようにも思える物だった。

 そしてその証拠に、ラズロは「ようやく行きましたか」と息を漏らした。それを見とがめたシが、本当に良かったのかと聞き返したぐらいである。杓子定規に言うなら、規律違反と言うことになるのだ。特にヴァルキュリアを連れて行く先が、安全を保証できない場所というのも問題だった。その行動だけでも、カヴァリエーレとして責任を問われることのはずだった。
 だがシの指摘に、大した問題ではないとラズロは笑い飛ばした。

「良いのかと言われましても、この場は若者には辛いでしょう。
 身の安全という意味なら、電子妖精を使えば問題は生じません。
 それぐらいのことなら、ラウンズであれば承知していますよ。
 それにブレイブスの頂点が大人しくしているようでは、この先が思いやられるというものです。
 本来もっと早く、ヴァルキュリアを連れて遊びに行くべきだったのですよ。
 何しろ彼らには、この場において顔見せ以外の役目はありませんからな」

 その仕事が終わったのだから、拘束時間も終わりだとラズロは言った。

「若いヴァルキュリアとラウンズは、本来奔放であるべきなのです。
 真面目さ勤勉さを貶めるつもりはありませんが、それはもっと年をとってからで良いでしょう。
 特にアヤセは、いささか真面目すぎて融通が効かない所があります。
 多少振り回すぐらいでないと、本当の意味の忠誠は得られませんよ。
 あとは、もっとアヤセにはシンジ碇に夢中になって貰わないといけません」
「それが、ヴァルキュリアシステムの鍵と言うことですかな?」

 シの疑問に、ラズロはその通りと大きく頷いて見せた。

「本来ラウンズというのは、最高のオスでなければなりませんでした。
 ただここ百年以上、男性のラウンズの実力は芳しいものではありませんでした。
 筆頭に立った者も何人かいますが、いずれも谷間の時期になった者ばかりです。
 そして筆頭どころか、男のラウンズの数も減ってきました。
 システム維持という意味では、非常に由々しき自体となっていたわけです。
 ここに来て、生きの良いレグルス・ナイトがラウンズになったと思っていたのですが、
 それ以上に生きの良い男のラウンズが誕生してくれました。
 しかも谷間ではなく、天才シエル・シエルを凌ぐ力を身につけ筆頭に立ちました。
 ならばその主たるヴァルキュリアにも、相応しい器量を身につけて貰わないといけません」
「シンジ碇は、それほどの逸材ですかな?」

 それはもうと頷いたラズロは、シにしてみれば意外な理由を最初に挙げた。

「長きに渡り維持されたシステムは、堅実さを優先しすぎて小さくまとまってしまいました。
 ある意味閉塞した状態にあったと言う事が出来るでしょうな。
 知らないという事情があったにしろ、彼は円卓会議の掟を破ってくれました。
 そしてただ破るだけではなく、掟に従う以上の結果を示して見せてくれたのです。
 その我が儘さ、そして力強さこそ本来ラウンズに求められることのはずでした。
 そして突出した力は、しかも未完成の力は、私たちに将来を夢見させてくれます。
 その上育成能力に優れているのですから、逸材としか言いようがないでしょう。
 だからこそ、ヴァルキュリアにはうまく手綱を握って貰いたいのです。
 小さくまとまらないようにすることこそ、ヴァルキュリアに求められることでしょう」
「エステル様は、それを失敗して更迭されたと言う事ですか?」

 シンジのヴァルキュリアが誰というのは、テラの危機を救ったところで有名になっていた。そのエステルが更迭された事実に、シは手綱を握るのに失敗したのだと考えた。だがラズロは、うまくやっていましたよとシの想像を否定した。

「ただ、周りが追いついていなかったというのが悲劇でした。
 本来の姿を見失っていたのは、賢人会議も同じだったのですよ。
 それもあって、あの事件では責任追求の方向を誤ってしまいました。
 その反動か、今はエステルを評価する声が高まっています。
 ただ今更元に戻すわけにもいかないので、アヤセの様子を見ているところです」
「では、アヤセ様はうまく手綱を握れそうですか?」
「握って貰いたいと、私たちは思っていますよ。
 だから彼女には、今まで以上にシンジ碇に夢中になって貰いたいと思っています」
「「女の髪の毛には大象もつながる 」ですかな」

 ラズロの説明に、シは一つの諺を持ち出した。そして意味が分からず首を傾げたラズロに、その諺の意味を説明した。

「女性の魅力は、どんな男でも引きつけられると言うことです」
「まさしく、ヴァルキュリアとラウンズの関係を説明した物ですな」

 大仰に頷いたラズロは、それを期待しているのだと改めて口にした。

「だから、お互いの関係を深めることこそ彼らの役目なんですよ」

 政治的なことは、賢人会議に任せておけばいいのだ。ラズロはそう言って、レセプションから逃げ出した二人の行動を正当化したのだった。



〜Epilogue〜

 祭というのは、何時の祭でも心沸き立つものだった。しかも新ヴァルキュリアとしてお披露目される立場ともなれば、その興奮はなおさらと言っていいのだろう。
 だがいくら興奮していると言っても、準備をお座なりにしてはならない。ヴァルキュリアとして、愛するお父様……カヴァリエーレに恥を掻かせることは絶対に許せないのだ。だからミモザは、鏡の前で何度も何度も自分の姿を確認した。くるくる回って後ろ姿を見たり、黄色のドレスをまくり上げて下着がおかしくないかまで確認したのだ。そして綺麗に伸びた黒髪は、飽きるほど櫛を通して整えた。それでようやく納得したミモザは、代々引き継いだ電子妖精ラピスラズリを呼び出した。

「ラッピー、お父様……じゃなくてシンジ様に準備が出来たとお伝えください」

 誰の前に出るのより、そう、他の男性ラウンズの前に出るより、ミモザはシンジの前に出ることに緊張していた。ただヴァルキュリアとして問題なのは、他の男に目がいかないと言うところだった。いくら近親婚の珍しくないブレイブスでも、親子の間で子供を作るのは極めて稀なこととされていたのだ。
 だがそんな前例は、ミモザにとってどうでも良いことだった。最強のオスに引かれるのがヴァルキュリアなのだと理由を付けて、初めてはお父様に貰って貰おうと考えていたのだ。何しろ愛するお父様は、筆頭に立って22年の間、誰にも負けていない歴史上最強のラウンズなのだ。

「ねえラッピー、おかしなところはないわよね?」
「大丈夫です、ミモザ様は完璧に仕上がっていますよ!」

 小さな妖精の姿で現れたラピスラズリは、ミモザに向かって親指を立てて見せた。このあたりは、散々テラに行った影響が出ているのだろう。
 ラピスラズリの保証に安堵したミモザは、扉を開けて明るい世界へと出て行った。ここから先は、次期ヴァルキュリア筆頭としての自覚を示す必要がある。テラと合わせて200を超えるレベル7オーバーは、彼女にヴァルキュリア筆頭の立場を約束していたのだ。

 明るい世界に飛び出たミモザは、まず最初にヴァルキュリア筆頭アルビレオのところに挨拶に行った。ちなみに彼女のカヴァリエーレは、レグルス・ナイトと言う。愛するお父様の兄貴分にしてライバルと言う事なのだが、現在22連敗を続けている永遠の2番手だった。その2番手の座も、そろそろ危なくなっていると噂されているのも知っていた。

「アルビレオ様、これからよろしくお願いします」

 優雅に見えるよう、ミモザはドレスの端をつまんで小さく会釈をした。新人ヴァルキュリアとして、お父様の顔を潰すようなことをしてはいけない。少し緊張しながら、必要と思われる礼儀作法に従ったのだ。

 アルビレオは、ミモザより2つ年上のヴァルキュリアだった。年に似合わぬ落ち着きと清楚さは、母親譲りと評判だった。そしてミモザと同じで、実の父親がカヴァリエーレを勤めていた。

「こちらこそと言いたいところですけど、今度こそ私のお父様が勝ちますからね!」
「アルビレオ様、世の中には出来ることと出来ないことがあるのですよ。
 レグルス様の場合、ワカバ様やバルド様に気をつけた方がよろしいのではありませんか?
 そうそう、ジルグ様は要注意かも知れませんね」

 ほほほと口元を隠して笑ったミモザに、アルビレオは少し目元を引きつらせた。年齢で2歳違う二人は、小さな頃から父親のことで言い合いを繰り返してきた間柄だった。そしてその言い合いは、必ずミモザの勝利で終わったのである。そのあたりは、父親の地位が子供の喧嘩にも影響していたと言うことだ。
 だがヴァルキュリアになると、一つだけアルビレオが圧倒的に有利なことがあった。それは、ミモザはシンジと血が繋がっているが、自分は血が繋がっていないという事実である。つまりミモザの望むものを、アルビレオは手に入れることが出来ると言う事だった。一説には、彼女の父親が「嫌とは言わせない」と凄んだと言うことである。

「そう言えば、シンジ様には祭の後にお食事に来ていただくことになっていますわ。
 今度は、お父様もお酒は控えると仰有ってくれてますのよ」
「そ、そう、べ、別に、ラウンズとしてはおかしなことではないわね……」

 その意味するところに、今度はミモザの目元が引きつった。先代から聞かされていたのだが、シンジはレグルスとしばしば夜通し酒を酌み交わしていたというのだ。その酒を控えるというのだから、空いた時間がナニに当てられるのかなど今更考えるまでもなかった。

「どうです、ミモザも私のお父様を招待しては?」
「ヴァルキュリア筆頭をご招待するだなんて、私のような新米には畏れ多いですわ」

 ますます目元の引きつりを大きくしたミモザに、分かりやすいわねとアルビレオは勝利を確信したのだった。そしてこれまでとは逆転した立場を、可能な限り生かそうと知恵を巡らせたのだった。



 そして今回のお祭りは、もう一人男性ラウンズのお披露目の意味も持っていた。ヴァルキュリア第三位シエラシエラのカヴァリエーレ、ジルグ・シエルのデビューだった。天才シエルを母に持つジルグは、11の歳にレベル9に達した天才なのだが、なぜかレベル10突破に7年を要した変わり者でもあった。

「ようやく、観念してくれましたね」

 ほほほと口元を隠して笑ったシエラシエラに、ジルグは「まあ」と気のない返事をした。いつも通りの反応を笑ったシエラシエラは、「緊張しないのですね」と少し方向の違うほめ方をした。

「今日の戦いについて、お母様は何か仰有ってましたか?」
「別に、いつもの通りです」
「いつもの通り、お父様の凄さを得々と説いてくださったのですね」
「あれは、惚気というものです」

 そう言って明後日の方を見たジルグに、そうですねとシエラシエラはもう一度笑って見せた。

「ところで、どうしてやる気になってくれたのですか?
 ジルグは、ずっとカヴァリエーレになるのを逃げていましたよね。
 ようやく私の魅力に気がついてくれた、そう考えて良いのかしら?」

 ふふと微笑みながら、シエラシエラは母親譲りの銀色の髪を手ですくい上げて見せた。きらきらと光を受けて輝く髪は、とても幻想的な美しさを持っていた。だがシエラシエラの魅力にも、ジルグの反応はかなり鈍かった。もう一度「別に」と言って、有らぬ方を向いたままだったのだ。

「それに、親父と比べられたくないからな」
「あら、お父様はとても素敵でしたわよ。
 とても優しく、そしてとても猛々しく、そしてとても可愛らしい方でしたわ」
「それを比べられたくないと言っている」

 ぷいと横を向いたジルグに、「嫉妬?」と言ってシエラシエラは声を立てて笑った。

「でしたら、ミモザさんを奪ってみたらどうです?
 お父様とエステル様の愛娘でいらっしゃいますよ」
「母親が違っていても、兄妹同士なんて気持ちが悪いだろう」
「でしたら、どうしてその気になったのかしら?」

 追及の手を緩めないシエラシエラに、ジルグはそっぽを向いたまま「泣かれたのだ」と白状した。

「泣かれたって、どなたに?」
「母だ、私のように逃げてくれるなと泣かれてしまった」
「それで、ようやくお父様を倒す覚悟が出来たのですね」

 なるほどと頷いたシエラシエラに、無茶を言うなとジルグは噛みついた。

「相手は、あの歳になっても年々強くなっていく化け物だぞ。
 新米のラウンズの敵う相手だと思っているのか!」
「でもあなたは、天才シエル様とシンジ様の血を継いでいるのですよね?
 十分に、化け物と戦う素質はあると思いますよ」

 将来性は十分と保証したシエラシエラは、ふくれているジルグに近づきそっと唇を重ねた。

「お父様のことを忘れさせてくださいね」

 そう言って甘えたシエラシエラに、少し顔を赤くしてジルグはそっぽを向いたのだった。



 自分は後何年頑張れば良いのか。戦いを前に、シンジは長い付き合いの電子妖精に尋ねた。エステルに始まり、アヤセ、レピス、セルリアと4代のヴァルキュリアに仕えてきた。そしてついに、実の娘ミモザがヴァルキュリアに就任することになった。すでにアースガルズに渡って24年が過ぎ、間もなく年齢も40になろうとしている。そろそろ良いだろうというのが、ここのところのシンジの口癖だった。

「そうですね、ライナ様が一人前になるまででしょうか。
 今11歳ですから、あと6、7年というところですね」
「まだ、そんなにあるのか……」

 長いなと零したシンジに、大丈夫ですよとラピスラズリは太鼓判を押した。

「まだまだシンジ様は強くなっていますから、当分筆頭の座は安泰でしょう。
 それに、それまで皆様サイド11で待っていてくださいますよ」
「でも、みんないいおばさんになってしまったね。
 まあ、僕もおじさんになったのには変わりなんだけど……」

 男性ラウンズが増えたお陰で、義務の方もかなり軽くなっていた。そのお陰で、時々サイド11に行って、引退した女性達とも逢うことができた。楽しそうに、「早くおいでなさい」と言われたときには、かなり心が動いたのも確かだった。

「ところでジルグ様ですけど、どうして急にやる気を出したのでしょう?」
「どうも、シエルの演技に騙されたようだよ。
 “私みたいに逃げないで”って泣いて頼んだら、ころっと騙されてくれたって。
 まだまだ青いと、シエルが笑っていたよ」
「あのシエル様が、そんなことをするようになったのですね……」

 遠い目をしたラピスラズリに、人は強くなっていくのだとシンジは答えた。

「そして、時間は心の傷を癒してくれるんだよ。
 あのシエルが、引退するのではなかったと悔しがるぐらいだからね」
「引退しなければ、シンジ様と愛欲に満ちた生活を送れたからですか?」
「半分冗談だと思うけどね」

 裏を返せば、半分本気と言う事になる。事実シエルは、二人目の時には、何度も受胎時期をずらして申告したほどだった。そしてその末生まれたのが、これから戦うジルグだった。

「それで、ジルグ様はどうです?」
「才能は飛び抜けていると思うけど……
 やっぱり、まだまだ経験不足が表に出ているね。
 それに6年も怠けていると、せっかくの才能も錆び付いてしまうものだよ」
「じゃあ、しっかりと錆取りをしてあげないといけませんね」

 つまり彼の電子妖精は、ジルグを徹底的に叩きのめせと言うのである。そうだねと笑ったシンジは、父親としての役目を果たすと宣言した。

「そんなに簡単に超えられたら、きっとジルグもがっかりするだろうからね。
 頂点に立つことがどう言うことなのか、しっかりと教えてあげることにしよう」
「でも、適度な手加減は必要だと思いますよ」

 圧倒的な頂点に立っているため、ラウンズにはまともにシンジの相手を出来る者が居なかった。相変わらず、他のラウンズより補佐の方が強いという状況が続いていたのだ。従って、シンジが全力を出したら戦いにならない事情が続いていた。指導と言う事を考えると、さすがに瞬殺するのはまずいだろう。

「そのあたりは、油断しないように気をつけるよ」

 負けたら恥ずかしいと口にしたシンジは、6代目となった彼の相棒、ギムレーへ移動するようラピスラズリに命じたのだった。これからは、父として越えるべき壁にならなければいけない。その第一段階が始まることに、シンジは心から喜んだのだった。







終わり

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